下山氏の精神状態を最もよく理解していると思われる夫人の証言ですが、時間の推移にしたがって内容は変化しています。まず失踪直後から見てみましょう。
吉展ちゃん事件で有名な名刑事、平塚八兵衛氏が下山氏失踪直後に夫人の証言をとっています。そのときは「高木子爵(自殺して当時話題になっていた)のようになるのではないか」、「ひょっとしたら、自殺じゃないかしら。自殺しなければいいんですが…」、「うちの主人は非常にもだえ(苦悩)していたのはたしかです。それでわたしはそういうふう(自殺する)に心配してるんですよ」と述べています(『刑事一代』p217-218、『下山事件全研究』p10、595、『資料・下山事件』p442、『真実を追う』p21、24、『生体れき断』p229)。しかし、その後一両日してから警察が訪ねたときには、「主人は自殺ではありません」と態度を一変させています(『資料・下山事件』p442、『生体れき断』p230)。平成元年7月21日付の毎日新聞は、当時大学生で下山氏と家族ぐるみの付き合いをしていた男性の証言を掲載しています。その男性によると、失踪直前、下山氏は彼に「つくづくイヤになっちゃった。疲れたよ」と話していたそうです。また、6日午後に下山夫人と会った際には「ウチのお父さん、自殺したのよ。息子が今、現場に死体を確認しに行っているけれど、このことは息子にも一切黙っててね」と言われています。このエピソードは
「ニッポンリポート」でより詳しく知ることができます。
こうして見てみると、夫人は失踪直後の非常に短い期間は自殺の可能性を口にしていますが(失踪当日などは、下山邸にやって来た刑事に「そんなこというもんじゃない」と言われるほどでした)、その後自殺に否定的な発言をしていることが分かります。しかし、これも極めて短い期間のみの話で、その後は最後までずっと沈黙を守り続けました。なお、下山家では下山氏の法要を7月5日(自殺ならば6日)におこなっています(『夢追い人よ』p16-17)。
- 2008/04/04(金) |
- 下山氏の精神状態
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