今から40年前、1968年出版の古い文献です。なぜ上巻だけの紹介なのかというと、管理者が上巻しか持っておらず、手に入りずらい下巻も今後読む予定がないからです。まず驚いたのがその厚さで(ページ数586)、ソフトカバーだということを除けば厚さも大きさもちょうど『下山事件全研究』と同じくらいです。東洋書房という出版社は著者の宮川弘氏自身が興した会社だそうで、元警察官であらゆる事件の裏表に通じているという経歴を生かし、「ノンフィクション・スパイシリーズ」として『実録松川事件』、『帝銀事件の謎』、『二・二六事件の真相』、『ケネディ暗殺の謎』といった本も発売予定だったようです。『下山事件の真相』の下巻が出版される前に会社は倒産してしまったらしいのですが、ネットで調べてみると鎌倉芸林という出版社から同じ著者の『下山事件の真相』の第1巻と第2巻が1977年に出ています。おそらく内容は東洋書房のものと同じなんじゃないでしょうか。
本の内容は、下山氏の弟が双子を嫌う風習から母親の知らぬ間に養子に出され、その後も密かに生きており、五反野で死んだのはこの弟のほうだ、というものです。生きているはずの下山氏は何をしているのかは下巻に書かれているのだろうと思います。下山氏の弟は半分ヤクザのような生活をしており、彼に関する部分は任侠ものの小説を読んでいるような気分にさせられます。血液型鑑定がキーワードで、かなりマニアックな血液型の遺伝学の話が出てきますが、そこらへんだけはやけに専門的な内容で、暇なときに寝転びながら読むという感じの本でもなく、しかし、本腰を入れて読んでみようかという気にさせる本でもありません。また、作中の「私」というのが著者の宮川氏なのかどうかも上巻を読む限りよく分かりませんでした。「私」は元警官ということですから宮川氏の経歴と合ってはいるようです。前書きがあればそういう点もすっきりして読み始められたかもしれませんが、この本には前書きがなく、下巻を持っていないため後書きも読むことができませんでした。
序盤に下山氏の司法解剖を担当した元東大講師なる老人が登場しますが、この老人が事件当時東大講師だった桑島氏でないことは確かなようなので、フィクションかと思っていたら途中から実在する人物がどんどん出てきたり、下山白書が収められていたりでノンフィクションぽくなります。『下山事件全研究』や『真実を追う』を読むと、やはりノンフィクションとして売り出されたようです。しかし、双子の弟の存在自体、今では真面目に受け取る人はいないように思います。
- 2008/04/06(日) |
- 下山事件関連書籍
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