「下山事件資料館」さんをリンクに追加いたしました。下山事件と言えばこのサイトでしょう。充実した資料は素晴らしいと言うほかありません。「無断でリンクして頂いて結構です。連絡も不要です。」とのことでしたのでリンクさせていただきました。
- 2008/02/18(月) |
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第二回目にして既に下山事件関連ではない書籍ですが、気にしないでいきます。本書の著者は生物学者ですが、生物学に限らず歴史学も含めて「過去を復元するための方法」について述べています。
過去に起こったことを復元・推測する際には直接的な実験や観察は道具として使えません。なぜなら歴史上の出来事は一回だけしか起こらず、反復観察ができないからです。その意味で、資料不足で事実関係が曖昧な歴史上の出来事に関して絶対的な真実を見出すことは不可能です。ただ、それを理由に「結局誰にも真実は分かりはしないのだから考えても時間の無駄」と投げ出すのは間違いでしょう。絶対的な真実は分かりえないにしても、「より良い推論」をすることは可能だからです。著者はその方法として、演繹でも帰納でもない「アブダクション」を紹介しています。アブダクションとは、データ(証拠)から導き出された異なる説明・推論群(仮説A、仮説B、仮説C・・・)に優劣をつけるための方法だといえます。優劣をつけるためのひとつの基準が「最節約性」です(その他にも色々な基準があります)。以下に著者が挙げた日常的な例(このブログでは多少改変しています)を紹介しつつ、最良の説明とは何なのかを考えてみたいと思います。
ある小学校の連絡網を使って情報「X」が保護者Aさんから保護者Fさんまで伝達されるという状況を想定します(保護者A、B、C、D、E、F)。連絡網は、「受け取った情報をそのまま次の人に伝える」というルールがありますが、最後の保護者Fさんが受け取った伝言は「X」とは少し異なった「X'」でした。Aさんが後で調べたところ、保護者Cさんから後の保護者は全て「X'」という伝言を受け取っていました。このような事実を説明する二つの仮説を以下に示します(著者が取り上げたふたつの仮説以外にも、異なった説明をしようと思えばそれこそいくらでもできます)。
【仮説1】
保護者Cさんが伝言「X」を間違えて「X'」と伝えてしまったことが原因である。
A(X)→B(X)→C(X')→D(X')→E(X')→F(X')
【仮説2】
保護者Cさんが間違って伝えた「X'」を、次のDさんが機転を利かせて「X」に戻してEさんに伝えたのにEさんがまた間違って「X'」を次の人に伝えてしまったことが原因である(しかもDさんはAさんの調査から洩れてしまった)。
A(X)→B(X)→C(X')→D(X)→E(X')→F(X')
仮説の優劣を判断するためのひとつの基準、「最節約基準」(シンプルな仮説を採用し、ややこしい仮説を棄却する)に従うと、伝言が「X→X'」に1回だけ変化する仮説1のほうが、「X→X'」が2回、「X'→X」が1回の計3回変化が起こる仮説2よりも優れていると判断されます。もちろん「最節約基準」が絶対に正しい基準でも唯一の基準でもないのですが、限られた証拠(保護者Cさんから後の保護者は全て「X'」という伝言を受け取っていたという事実)のみから推測するならば、仮説1のほうがより自然な推論であることは確かでしょう。このような方法論は、比較文献学の写本系図の推定や歴史言語学の言語系統樹の推定でも用いられています。
系統樹推定とは異なりますが、上記の考え方を下山事件に当てはめて考えてみると(当てはめていいのか・・・;)、自殺説より他殺説のほうがより「ややこしい」ことは確かだと思います。例えば替え玉説などその最たるものでしょう。替え玉説のような複雑な過程を含む説を主張するならば、法医学鑑定や目撃証言その他の全ての証拠が強く他殺を示唆していることが必須条件でしょうが、管理者には替え玉説がその条件を満たしているとは思えません。法医学鑑定に関しては既にご紹介したとおりです。その他の問題については今後扱います。
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