下山事件自殺説紹介ブログ

他殺説に比べ情報が手に入りにくい自殺説の紹介をします。

捜査開始時の刑事たちの意見

 いろいろな文献で述べられていることですが、下山事件発生当初の警視庁の刑事たちの意見は、他殺が圧倒的でした。昭和24年7月7日の特別捜査本部会議での捜査一課、二課、三課の計21人の刑事たちの意見を以下にまとめてみます(『真実を追う』p51-53)。

佐藤部長刑事 他殺
斎藤部長刑事 他殺
島部長刑事 他殺
小田部長刑事 自殺
小倉部長刑事 他殺
松原部長刑事 他殺
景山部長刑事 他殺
新木部長刑事 他殺
白滝部長刑事 自殺6他殺4
大島刑事 他殺6自殺4
新井部長刑事 自他殺不明
堀部長刑事 他殺8自殺2
小薬部長刑事 自他殺不明
金井刑事 他殺
平塚刑事 他殺8自殺2
杣部長刑事 自殺
鈴木部長刑事 他殺
栗原部長刑事 自殺6他殺4
留目部長刑事 自他殺五分五分
坂和部長刑事 自他殺五分五分
須藤部長刑事 自他殺五分五分

 金井刑事というのは諸永裕司氏の『葬られた夏』に出てきた金井岩雄氏だと思われます。平塚刑事は「吉展ちゃん事件」解決で有名になった名刑事平塚八兵衛氏です。
  1. 2008/05/02(金) |
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未発見所持品

 下山氏の所持品のうち、ロイド眼鏡、ネクタイ、喫煙器具などは警察の徹底的な探索によっても発見することはできませんでした(『真実を追う』p89-91、『封印されていた文書 Part1』p426-427)。これらの所持品が現場周辺から見つからなかったことは不自然であると、他殺説の文献では強調されています(『シモヤマ・ケース(文庫版)』p239、『下山事件 最後の証言(増補完全版)』p98、185、『葬られた夏(文庫版)』p132、156)。ついつい確かにおかしいと思ってしまいがちですが、枕木上の血痕群や下山油などと同じで、これが本当に「不自然」で「特別」なことなのか、ということをまず最初に確認する必要があります(当ブログ管理人の印象では、他殺説の文献ではこのプロセスが抜け落ちている場合が多いように思います)。一般的に鉄道自殺の場合に所持品は全て見つかるものなのか否かを調べれば、それはすぐに確かめられます。

 結論から先に述べると、遺体にせよ所持品にせよ、完全に揃うことのほうがむしろ珍しいようです(『下山事件全研究』p495)。実際、下山事件の場合にも、ワイシャツは福島県の平駅で発見されていますし、褌の一部と思われる布片は轢断列車を点検した際に水戸機関区で見つかっています(『刑事一代』p219、『下山事件全研究』p495)。これらは運よく見つかったからよいものの、駅と駅の間の地点で落ちていたならおそらく発見されることは無かったでしょう。錫谷徹氏の『死の法医学』には、轢断死体の顔頭部面右側の軟組織(分かりやすく言うと、顔の右側がお面のように頭蓋骨から剥がれたもの)が列車に付着し、福島県から北海道まで運ばれた例も示されています(p185)。

 また、下山事件では完全な現場保存までに4時間を要していて、その間に人に拾われた可能性もあるうえ(『下山事件全研究』p182)、轢断列車を含め、検証までに上り下り9本の列車が通過しており、その風圧で所持品が飛ばされ土手下の水田や池に深く潜ってしまえば、発見することはやはり困難です(『真実を追う』p91)。

 なお、余談ですが、煙草関係は全てが見つからなかったのではなく、上着のポケットには未開封のピース一箱、開封済で何本か吸われているピース一箱がそれぞれひとつずつ見つかっています(『生体れき断』p93)。
  1. 2008/04/21(月) |
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腕時計の証拠品としての価値

 轢断現場周辺に落ちていた下山氏の腕時計のネジを警官が動かしてしまったため、証拠としての価値がなくなってしまったという記述があります(『日本の黒い霧 上巻(文庫版)』p14)。確かにその行動は証拠品の扱いという観点からすると軽率だったかもしれません。しかし、勘違いしてしまいやすいのですが、その警察官は時計の針を動かしたわけではなく、時計の停止時刻(12時19分57秒)を確認したうえで、時計が自然に止まったのか、それとも轢断のショックで止まったのかを知るためにネジを巻いたのです(『下山事件全研究』p84、『生体れき断』p147-148)。したがって、腕時計のネジが警察官によって巻かれたことで失われる情報というのは、「ネジを巻いてから轢断のショックで時計が止まるまで、どれくらいの時間が経っているか」ということです(もちろん、轢断のショックではなく、何者かに暴行されたときに腕時計が壊れて止まった可能性もありますが)。これはネジの巻き具合から大体推測できるようです。ですので、轢断の時間を推測するための証拠としての価値は損なわれていませんし、実際腕時計の停止時刻は、列車の推定通過時刻(12時19分30秒)とほぼ同じでした。ちなみに下山氏は、毎朝決まった時刻にネジを巻いていたそうです(『今だから話そう』p227)。

 なお、『下山事件 最後の証言(増補完全版)』では、「ところがこの警察官がその腕時計の針を動かしてしまった(後に報告)ために、総裁の死亡時刻を推定するための重要な証拠品としての価値がなくなってしまった」とありますが(p98)、警察官は腕時計の針を動かしてはいない、自殺であろうが他殺であろうが腕時計のネジの巻かれ具合と死亡時刻の推定とは直接的な関係はない、という2点において間違っています。
  1. 2008/04/11(金) |
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